情報ネットワーク法学会第15回研究大会の報告など

前の記事が第12回研究大会の報告だったので、少し前の話ですが、昨年11月末に開催された、第15回研究大会を振り返ってみようかと思います。

・ 当日の状況

昨年の第15回研究大会は、北九州市の北九州国際会議場で開催いたしました。

情報ネットワーク法学会での初の九州、初の2日間開催ということで、特に九州での開催は、私にとっても悲願であったこともあり、理事任期中に開催できたことは嬉しい限りでした。なお、地元ということで、今回、私は同研究大会の副実行委員長を務めさせていただいていたのでした。

研究大会のプログラムは、同学会のサイトをご覧いただきたいのですが、記念講演、特別講演、分科会10、個別報告32本と、この上なく充実した大会となりました。

このうち、私は、第2分科会(マイナンバー)へ登壇、個別報告Dの司会をさせていただきました。第2分科会では、専ら民間事業者、特に弁護士の立場から、マイナンバー制度への対応と問題点について述べさせていただきました。こちらについては、後日、ブログで一部内容を書かせていただこうと思っています(管財事件とマイナンバー制度について)。

私の参加したもののうち、特に印象に残ったものについて、若干書いてみたいと思います。

・ 特別講演「昨今のサイバーセキュリティ事情と対策」

西本逸郎氏による特別講演は、分かりやすい例や、ときどき笑いを入れるなどアクセントの効いた内容で、最後まで集中を途切れさせることのない語り口が非常に印象的でした。
西本氏は、特別講演会のあと、第1分科会にも登壇していただいたのですが、私は裏で第2分科会に登壇していたことから拝聴できず、残念でした。

・ 個別報告「近時の裁判例を踏まえた検索エンジン運営者に対する削除請求に関する考察」、第6分科会「プロバイダ責任制限法関連」

これらについては、私自身、削除請求や発信者情報開示請求などに実務で携わっている関係で、特に関心があり、大変勉強になりました。
個別報告では、大阪の田保雄三弁護士、岡本仁志弁護士、木下英弁護士、金啓昭彦弁護士より、検索エンジン運営者に対する裁判例をベースとして、現在の状況を整理してご発表がなされ、実務において役立つ情報をいただきました。

第6分科会では、削除請求、発信者情報開示請求に精通された先生方が登壇され、それぞれの経験談に基づいたお話があり、参考となるとともに、この種の問題は、まだまだ発展途上であるという印象を受けました。また、九州の登壇者が一人もいなかったのは、残念なことで、この種事件の解決にあたる弁護士が当地で活躍する必要を感じました。

・ 個別報告「情報材に対する強制執行~営業秘密、著作物性のないデータベースを中心に」

小倉秀夫弁護士によるこの発表は、情報という法的性格や権利性、財産性があいまいなものについての執行可能性を検討する意欲的なもので、私自身、情報の財産性、権利性については、従前より研究対象としていることもあり、大変参考となりました。

・ 個別報告「TPPプロバイダ責任条項の課題」

丸橋透氏によるこの発表は、TPPにおけるプロバイダ責任条項における課題を整理したものでしたが、我が国におけるプロバイダ責任制限法その他の法律とTPPの条項との異動について、まとめて整理されており、整理された表だけでも一見の価値がある、ぜいたくな内容でした。

論文として学会誌に掲載されることが今から楽しみな内容でしたが、個別報告の内容としては贅沢に過ぎるという印象で、このテーマで、一つのイベントを開催してもよいのではないかと個人的には思っています。

・ 第7分科会(仮想通貨)

今年に入り、Fintechの話題はさらに盛り上がり、ブロックチェーンという単語を日常的に聞くようになってきましたが、第7分科会は、東洋経済新報社出版の「仮想通貨」の著者3人(岡田仁志准教授(国立情報学研究所)、高橋郁夫弁護士、山﨑重一郎教授(近畿大学))による貴重な分科会でした。

山崎教授より、ブロックチェーンに関する詳細な技術的なレクチャーがあったほか、高橋弁護士より、仮想通貨の定義に関する試案が述べられるなど、単にこれまでの議論を整理したものにとどまらず、将来への議論を行う先進的な分科会となりました。

・ まとめ

今回の研究大会では、充実した内容での開催ができた結果として、当学会の地方大会としてはかなりの人数のご参加をいただくことができました。また、参加された方からの評価も、概ね好評で、運営を担当した身としては、ほっと胸をなでおろすとともに、大変うれしく存じました。

もっとも、残念だったのは、この種の分野で、これだけ充実した内容のイベントを九州で開催できることは滅多にないことなのですが、地元からの参加がそれほど振るわなかったことです。

次回、九州で同学会での研究大会を開催することは、当分ないと思われますが、次回開催されるときまでには、九州で盛り上げていかなければと思った次第です。

なお、本年で、私の情報ネットワーク法学会での理事の任期も終わりますが、任期満了まで力を尽くすとともに、次期理事へとつなげていけるよう、努力したいと思っています。