ゲーム内アイテムと財産的価値について(2) - 課金用アイテムによるガチャで課金用アイテムを入手できるシステムについて

ゲーム内アイテムの財産的価値に関して、私が気になっているのは、賭博との関係です。
例えば、LINE POPの場合、宝箱の中からルビーが当選することもあったようです。

宝箱の鍵の仕組み

ルビーは1つ約10円で、一度の課金額が大きくなると、若干ボーナスでルビーが多めにつく仕組みになっています。
宝箱の鍵は、1つにつきルビー約8個と交換でき、交換する量が多くなると、大目に鍵がもらえる仕組みになっています。
宝箱を1つ開けるには、鍵が一つ必要で、中身から、ルビーが10個、50個、100個出てくる可能性があります。

そうすると、日本円で換算すれば、約80円かけて、8000円相当の財産的価値が返ってくる可能性のあるクジを引いているような関係となります。

賭博の意義について、例えば、賭博罪でいう賭博は、偶然の事情に関して財物を賭け、勝敗を争うことをいいますが、ここでの「財物」は、有体物又は管理可能物に限らず、広く財産上の利益であれば足り、不動産、債権等を含み得るとされています(※1)。

ゲーム内のアイテムというのも、本来的には、ゲーム運営者からサービス提供を受ける権利なので、債権として、ここでいう「財物」にあたる可能性があります。(※2
ガチャと賭博の問題は、以前から問題視されてきたのですが、この適用が難しかった一つの理由として、得られたアイテムの経済的価値が客観的に分からないというところがあったと思います。

ただ、本件のように、最終的に経済的に評価可能な財産的価値が当選するような仕組みを作ってしまうと、そのあたりの障害は飛び越えてしまうのではないかと。

なお、この場合、プレイヤーが賭博罪に当たるかどうかのほか、サイト側が賭博場を開帳したといえるかどうかも問題となります。その場合、場をしたといえるかが問題となるでしょう。このあたりは、昨年10月28日の福岡地裁の野球賭博に関する判決が参考となるように思われます。

また、これら行為が賭博に当たるとすれば、課金行為が公序良俗に反するものとして、無効と取り扱われる可能性もあります。

ゲーム内アイテムの財産的価値、財産上の利益の問題は、既に報道されるように、資金決済法上の前払式手段に当たるかという問題でも大きな問題ですが、これにとどまらず、多種多様な法的問題に波及する可能性があります。
法規制のある中で、どのように立ち回るかというのは、法律実務家としての腕の見せ所ではありますが、これ以上の法規制を回避するために自主規制ルールが整備されたりしていることから分かる通り、今ある法を見ているだけでなく、今後の立法の方向を考慮して立ち回ることも大切なわけで、そこの観点が抜けてしまうのは、大いにまずいのではないかと、最近、決済に関係する業界の動きを見ていて思う次第です。



※1アイテムについて、財産的価値を否定する見解もあるようですが、それが武器であろうが、チケットであろうが、ゲーム運営者に特定のサービスの提供を求めるという意味では、債権にあたると思われますし、いずれにしても、財産的価値が全くないという見解は取り得ないように私は思います。なお、ゲーム内アイテムの詐取について、詐欺利得罪を認めた裁判例として、メープルストーリー事件があります。
※2 条解刑法第2版487~488頁
※3 FXの賭博該当性について検討したものとして、 

ゲーム内アイテムと財産的価値について(1) - 課金用アイテムで課金用アイテムを購入することの意味について

ゲーム内アイテムと資金決済法の関係で、最近、いろいろと騒がれていますが、LINE POPの件に関しては、「宝箱の鍵」で「宝箱」を開けることが、電子マネーによるサービスの対価支払いのような関係にあるかということが問題となっています。もっとも、「宝箱の鍵」は、現金でこれを購入することができず、アイテムとの交換でのみ入手するできることが問題を複雑化させています。

すなわち、このゲームの場合、リアルなお金で購入できるルビーというアイテムがあり、ルビーは、様々な用途に使えるところ、そのうちの一つが「宝箱の鍵」に交換するという用途で、その「宝箱の鍵」というのは、ゲーム内でランダムに発生する宝箱を開けるために必要なアイテムであって、宝箱を開けると、いろいろなアイテムが当たるという仕組みになっていました(下図参照)。

宝箱の鍵の仕組み

本件では、前払式支払支払手段該当性の要件のうち(資金決済法3条1項)、この宝箱を開けるということが、権利行使といえるのかと、宝箱の鍵の入手について、対価発行といえるのか、が特に問題となります(※1)。

このうち、対価発行については、ルビーを財産的価値としてみて、これを対価として得て宝箱の鍵を発行しているとすれば、満たすと考えられるわけです。(権利行使該当性は、別に詳しく説明しているサイトがありますので、ここでは触れません)。(※2)

少なくとも、直接の課金により得ているアイテムというのは、現実世界における価値評価と結びつきやすい関係にあるので、財産上の価値と捉えることは、比較的分かりやすいのではないかと思われます。

最近は、課金アイテムを使って、別のアイテムに交換させ、そのアイテムでガチャを引かせるようなサービスが増えてきているような気がしますが、一時はごまかせるにしても、全体を見れば、基本的には名前と価値の表示の単位を変更しているくらいで、実質的には直接課金しているのとほとんど変わりなく、右に習えで法的な検討を緩めてしまうことはリスクが高いように思われます。



※1 LINE POPの件について詳しい検討を行ったものとして、法律事務所ミライト・パートナーズの2016.4.6付けブログ「LINE(株)に対する関東財務局検査と資金決済法に関する簡単な解説」が参考になります。
http://milight-partners-law.hatenablog.com/entry/2016/04/06/143532#fn-28adf80c
※2なお、ニュース記事などのなかには、宝箱の鍵自体を財産的価値とみるかどうかを問題としているものもあるようですが、「宝箱の鍵」自体が前払式支払手段かを問うのであれば、財産的価値があるかどうかを問題とすべきは、この場合、対価たるルビーです。

情報ネットワーク法学会第15回研究大会の報告など

前の記事が第12回研究大会の報告だったので、少し前の話ですが、昨年11月末に開催された、第15回研究大会を振り返ってみようかと思います。

・ 当日の状況

昨年の第15回研究大会は、北九州市の北九州国際会議場で開催いたしました。

情報ネットワーク法学会での初の九州、初の2日間開催ということで、特に九州での開催は、私にとっても悲願であったこともあり、理事任期中に開催できたことは嬉しい限りでした。なお、地元ということで、今回、私は同研究大会の副実行委員長を務めさせていただいていたのでした。

研究大会のプログラムは、同学会のサイトをご覧いただきたいのですが、記念講演、特別講演、分科会10、個別報告32本と、この上なく充実した大会となりました。

このうち、私は、第2分科会(マイナンバー)へ登壇、個別報告Dの司会をさせていただきました。第2分科会では、専ら民間事業者、特に弁護士の立場から、マイナンバー制度への対応と問題点について述べさせていただきました。こちらについては、後日、ブログで一部内容を書かせていただこうと思っています(管財事件とマイナンバー制度について)。

私の参加したもののうち、特に印象に残ったものについて、若干書いてみたいと思います。

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第12回研究大会での個別発表と若干のご報告

情報ネットワーク法学会第12回研究大会にて、「データ消失事故におけるクラウドサービス等提供者の民事責任」と題し、個別発表をさせていただくことになりました。
今年は、6月の大規模データ消失、漏えい事故以降、このテーマを半年にわたって追ってまいりましたが、今回は、学会で消失事故の検討を行うことと致しました。この件に関する私の今年の研究活動の集大成といえるかと存じます。時間は、30分と短いため、テーマを絞った発表になりますが、その分、深くお話しできるよう頑張りたいと思っています。
第12回研究大会の詳細はこちら
今年の研究大会も、内容は盛りだくさんです。個人的には、個別発表C-1の「インターネット上の不法行為などにおける本人性について」、特別講演のスルガ銀行事件に特に興味を抱いています。C-1は、自分の個別発表の裏なので、聞けないですけど。
なお、報告ですが、この度、同学会の理事に就任致しました(先日のオンライン総会にて)。力の限り学会を盛り上げるよう尽くしていきたく存じますので、よろしくお願い致します。今回の研究大会でも、第4分科会の副主査を務めさせていただいております。とはいえ、分科会の当日は、フロアにおりますので、あまり運営側らしい動きはみせないかもしれませんが。
抱負というか、目標というか、希望というかですが、九州でこの問題に携わる者として、九州での研究大会の開催ができればと思っております。今後、ご協力をお願いすることもあるかと存じますが、九州でこの問題にかかわっているすべての方、今後とも、是非、宜しくお願い致します。

データ消失事件と諸問題

先日、TechTargetジャパンで、「SaaSでデータが消失したら誰の責任?進むクラウド事業者の多層化問題」という記事をかかせていただき(URL)、また一昨日は、情報セキュリティ大学院大学で、「クラウド時代の契約問題:サービス提供者のデータ消失やデータ漏洩にどう対処するか?」というワークショップ(URL)でお話をさせていただきました。
これらの記事と講演に関して、若干付言しようと思います。
まず、TechTargetジャパンの記事について。TechTargetでは、国内法の適用との関係で、それぞれのプロバイダが国内に存在する場合を想定して書かせていただきましたが、クラウドの多層化やサプライチェーンの関係で一番問題となるのは、越境を含む場合だと思っています。
想定しているのは、国内のSaaSが海外のIaaSを使っていて(海外IaaSを使用していることも表示していないケースもあるかもしれません)、IaaSの障害でデータが消失したようなケースです。
記事に記載しているとおり、もともと、このようなケースでIaaSの責任を問うことは簡単なことではないのですが、越境が絡むと、これは更に難しくなります。
ただ、それだけではなくて、IaaSの事業者がファーストサーバのように具体的な報告をするとは限りませんし、事故原因についての詳細を知る、すなわち、証拠を収集することも困難となる可能性があります。
その場合、SaaS事業者の責任を問うこともまた、難易度が上がるものと予想されます。
次に、講演中で質問があったバックアップの責任に関してです。
バックアップについてプロバイダが責任を負うかどうかは、クラウド利用契約の本質的な義務としてのバックアップ義務が存在するかと、規約の定めによります。
クラウド利用に当たって、クラウド側でのバックアップ機能を備えない限り、そもそもサービスの提供が不完全であるという考え方に立てば、バックアップは、クラウド事業者側の本質的な義務ということになると思われますし(ただし、バックアップをとらなかった利用者の過失を考慮する場合はある)、他方、オンプレミスの環境において、利用者でバックアップをとるのは当然であったところ、単にクラウドのインフラを自身の環境の拡張に利用しているだけで、データの保持に関する責任は利用者が負っているのは当然という立場に立てば、バックアップの責任は、原則として利用者が負うことになると思われます。
このあたりは、そもそも裁判例が少なく、判断も分かれているので、そのような義務があるかどうかはこれからの展開を待つことになるのだと思われますし、今後も裁判上で争いが続く部分と思われます。
また、バックアップができない、あるいは困難なサービスを提供していた場合、特にデータの組成もクラウド側で行っているようなサービスの場合、バックアップはそもそも困難ですし、あるいは、バックアップをユーザーが十分にとることができるようなインフラを備えていない事業者の場合はどうなるかという問題もあります。
そのような事業者を選択したことの是非の問題も当然生じるとは思いますが、法的に考えると、そのようなサービスを事業者が提供している以上、事業者側でバックアップを採るべき義務があるという考え方はできると思いますし、バックアップの容易性が事業者のバックアップ義務の有無にも関係するのではないかとも考えています(ワークショップで御紹介した平成21年判決も、バックアップが容易であったのに、というような言い回しをしています)。また、バックアップをとらなかったことによる利用者の過失がしん酌されるかも不明です。
その意味で、一律に今後、バックアップの責任が利用者だけにかかってくるとは断言できないと考えています。

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