マイクロレンディングサービスと貸金関連法規2~返還約束と貸金業規制法上の「貸金業」について

今回は、前回の続きというか、貸金業規制法における「貸金業」と、消費貸借の関係、特に返還約束について述べたいと思います。

1.貸金業法における「貸付け」と「貸金業者」

貸金業法における、「貸付け」と民法でいう金銭消費貸借とでは、定義にずれがあります。

貸金業規制法における「貸付け」は、「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む」の総称であり、これを業として行うものが、同法上の「貸金業者」です(貸金業規制法2条1項)。

2.貸金業法と金銭消費貸借の関係

これらの定義のうち、純然たる金銭消費貸借は、「金銭の貸付け」だけです。

これに対して、「金銭の貸借の媒介」、「(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介」は、金銭消費貸借契約ではありません。

これらのうち、「(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介」を貸金業法上、「貸付け」と取り扱うこととしたのは、これらが、法的性格は異なるものの、経済的に貸付けと同様の機能を有することが理由とされています。※1

3.「返還約束」を伴わない「貸付け」

ここで問題となるのは、売渡担保が「貸付け」に含まれていることです。

売渡担保は、買戻しや再売買予約が就いた債権譲渡であって、債権担保の一種ですが、その機能は、譲渡担保と非常に似ています。

買戻しも再売買の予約も、担保として利用される場合、売買契約を成立させたうえで、売買代金と利息相当額を支払えば、一度売買により移転した所有権を売主に戻すものですが、買い戻しは、先になされた売買契約の解除することにより、再売買の予約は、既存の売買契約を有効としながら、予約を完結し、新たな売買契約を締結するものです。

譲渡担保も、これらと非常によく似た概念ですが、消費貸借関係が存続するかどうかにより区別されます。※2 ※3 ※4

すなわち、売買だけが残り、消費貸借契約関係が存続しないものが、売渡担保です。

なお、譲渡担保と売渡担保の概念は、相対化しており、例えば、再売買が予定されている売買契約の形式をとっていて、目的物の所有権移転が明示で合意されていても、具体的事情から、債権を担保するという目的を達成するのに 必要な範囲内において目的物の所有権を移転する旨が合意されたにすぎないというべきとし、譲渡担保契約と解釈した例などがあります。※5

3.譲渡担保・売渡担保と「貸金業」が該当性

譲渡担保は、担保のために目的物の所有権を債権者に譲渡するもので、担保に供されたとしても、債権は直ちに消滅しません。

そこで、譲渡担保と解釈できる場合には、そもそも貸金債権が存在することになるため、前者の「貸付け」に当たります。

これに対して、買い戻し、又は再売買の予約に当たる場合、貸金債権は存在せず、売買代金債権が存在することになりますが、仮にそうだとしても、これらは売渡担保であるため、後者の「貸付け」に当たることになります。※6 ※7

また、貸金業規制法の適用を受けるに、講学上の売渡担保そのものである必要はありません。

上記の貸金業規制法2条1項の定義では、「手形の割引、売渡担保『その他これらに類する方法』によつてする」と規定されているからです。そのため、本来は、これらそのものである必要もないです。

もっとも、ここで類する方法といえるかどうかには、解釈が入ることになります。

5.まとめ

今後、マイクロレンディングをサービスとして目指す方は増えていくのかもしれませんが、少なくとも、上記のような規制をクリアできるような仕組みを構築することが出来なければ、貸金業法による規制を免れることはできず、登録なしにビジネスをすることは厳しいと言わざるを得ないでしょう。

そこでは、小手先の法律・条文の操作ではなく、真に利用者のためのサービスを構築する真摯な姿勢と努力が必要と思われます。

また、仮に、マイクロレンディングが今後、国民にとって真に必要なサービスであると考えられたとしても、そこでは、従来からある禁圧すべきヤミ金との純然たる違いをどこに求めるかを考えなければなりませんし、マイクロレンディングサービスがヤミ金化しないためにはどうすればよいかを検討しなければなりません。

それらは、本来、適切な法規制のあり方の中で考えるべきことであって、単にビジネス上の必要から、登録を免れればよいというような考えで進めてよい話ではないと思われます。

※1 上柳敏郎+大森泰人編著「逐条解説貸金業法」52頁、財団法人大倉財務協会編「新訂実例門等式貸金業法のすべて」23頁

※2 我妻栄「新訂担保物権法」593頁では、「…『売渡』という形容詞は債権と関連のないーその限りでは真に売買を手段とするーものだけを用いて、これを「売渡担保」…と呼び、債権と関連のあるー消費貸借を締結し、その債権を担保するために担保物を移転するーものは「譲渡担保」…と主張されるようになった…。その提案は正しい」としています。

※3 機能としては、差額の精算義務があるか否か、期間到来により受戻権が当然消滅するか、目的物が不可抗力で滅失した場合に、代金の返済を請求できるかが違うとされています。

※5 最一小判平成18年7月20日判決

※6 但し、後者の場合には、金銭消費貸借自体はないことになるため、出資法や利息制限法の適用がなくなると思われます。取扱いの違いは、貸金業法と金銭消費貸借の「貸付け」の範囲の違いによります。

※7 なお、先にあげた事例の場合、売買があり、代金と手数料を支払えば、解約して物を取り戻すことができるという立て付けであるため、買戻しか再売買の予約かと考えれば、買戻しに近いと思われます(売買契約が解約により解消するため)。

なお、ネット上で読める参考となる文献として、以下があります。

近藤雄大「買戻特約付売買の法的性質と譲渡担保」(福島大学行政社会学会・行政社会論集)URL

富田仁「買戻と譲渡担保に関する一考察(一)~(二・完)」(亜細亜法学43巻1号、2号)URL(1) URL(2)

東京弁護士会「 『クレジットカードのショッピング枠の現金化』に関する意見書」https://www.toben.or.jp/message/ikensyo/pdf/20110207_2.pdf

→ショッピング枠の現金化について、貸金業法2条1項を引き、「現在、行われている現金化取引は、必ずしも、金銭消費貸借契約の締結によるものではないが、その実質は、本来はショッピング(物品購入)のために利用すべきクレジットカードのショッピング枠を、キャッシング(金銭借入)目的のために利用するというものであり、物品購入は仮装されているものに過ぎないとも考えられることに着目すれば、このような現金化取引は、貸金業法及び出資法上の「貸付け」に当たり、その規制の対象となると解することも、十分に可能であると考えられる。」としている。

本文とは直接関係ないが、「媒介」に関しては以下の文献があります。

日本貸金業協会「貸金業法における『金銭の貸借の媒介』について」
http://www.nbfa.jp/20160915.pdf

マイクロレンディングサービスと貸金関連法規

本日いろいろと話題になっていたマイクロレンディング的なアプリについてです。

1.前提

まず、今回問題となった具体的な事案のサービスの運営主体は、古物営業の許可はとっているものの、貸金業や質屋営業の許可は得ていない様子なので、これを前提に検討します。

また、具体的事案の利用規約では、古物の売買を前提とし、目的物の引渡期限を2か月に定め、引渡期間の経過までの売買契約解約と売買代金支払義務、15%のキャンセル料の支払義務が定められており、同じく、これを前提に検討します。
(特定の企業を責めたいわけではないので、できるだけ抽象化します)。

たしかに、上記の規約上の体裁としては、2か月後の目的物引渡しを定めた古物の売買があり、一見、古物営業の許可のみでいけているようにみえます。

しかし、この売買は、2か月間は利用者側で売買契約を自由に解約し、売買代金と15%のキャンセル料を支払えば、目的物の引渡しを避けることができることを合わせて考えれば、その実質は譲渡担保であるといえます(※1)。

そもそも、古物の流通のために、売主に所有を留保する必要はなく、これが単なる古物の流通であるという言い訳自体が不合理です。この状況は、返済を前提とするUIから認められるところでもあります(※2)。

結局のところ、ここで行われているのは、実質的には担保付きの貸金であるといます。

実質的には担保付き貸金であるものについて、消費貸借契約としての法律効果を生じさせるかどうかは、最終的には、民事に関しても刑事に関しても最終的には裁判所の判断となり、あるいは取締りの関係では主務官庁の判断となりますので、確実に担保付き貸金であるとは現時点で断定できませんが、以上で見てきたように、基本的に本件事案のサービスは、貸金業や質屋営業における規制の潜脱を行うもので、私としては、本件は、貸金の関連法規が適用されるべきサービスと考えます。

(※下線部2017/6/29 8:33修正:この点については、実質論だけで必ずしもそうなると断定できないのではないかという意見をいただきました。また、「商品を送れば金銭の支払いの義務が生じないものについて、返還合意を観念できるか」との指摘を頂きました。これらを踏まえ、上記のように記載を修正し、さらに、法解釈の問題で、断定的に書くことは適切ではないように思われましたので、これを改めました。ご意見有難うございます。)

この場合、問題となりそうなのは、質屋営業法、貸金業法と出資法です。

2.質屋営業法との関係

まず、質屋営業法でいう「質屋営業」は、「物品…を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業」をいうと規定されています(同法1条)。

ここでの「質」が民法の動産質と同義であれば、占有改定(元の占有者が、新占有者のために占有する意思を示すことによる占有権取得で、占有の外観が変わらないもの)では成立要件を満たさず、単に譲渡担保があるだけである以上、そもそも、質屋営業とはならない可能性が高くなります(※4、※5)。

なお、仮に質屋営業に当たるとすれば、無許可であるため、無登録で質屋営業を営んだとして、処罰の対象となります(質屋営業法30条・5条、3年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金又は併科)

3.貸金業規制法との関係

質屋営業にあたらないとすると、残るのは単なる貸金であり、今度は問題となるのは、貸金業法、出資法との関係です。

まず、貸金業規制法でいう「貸金業」は、「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うもの」とされています。

このように、利息を収受するかどうかは貸金業であるかどうかの問題には関わらず、キャンセル料が仮に利息ではないとされたとしても、譲渡担保をとった貸金を業として営んだということであれば、無登録でなされたものとして、処罰の対象となります(10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金または併科)。

次に、キャンセル料が利息と考えられる場合(率でとるし、元が貸金なので、利息以外考えられないのだが)、出資法の問題となります。

キャンセル料を2か月で15%とすると、単純に6を掛け、年間で90%となります(実際には、2か月「以内」で、率が変わらないので、返済期間によってはもっと高くなります)。

出資法上、業として行わない者が処罰される金利は、109.5%ですが、業を行なう場合には、年20%を超える割合で利息の契約をすれば、処罰されます(出資法5条、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金)。

なお、業として行っている者でも、109.5%を超える利息を取る場合には、さらに重い処罰がありますが、上述のように、例えば1か月で返したのに、率を変えないと、年利180%にも及んでしまうため、楽々これを超えてしまうことにもなります。

さらに、利息制限法があります。利息制限法では、「金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、利息とみなす。ただし、契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りでない。」とされていて、このみなし利息規定があることにより、ほかの法律より、利息とみなされる可能性が高いです。ここでのキャンセル料が「契約の締結及び債務の弁済の費用」にあたるのだというのは、かなり無理があるように思われ、そうなると、手数料自体も、年20%に切り下げられることになります。もっとも、上述の処罰されるリスクと比べれば相当低いリスクといえますが。

4.まとめ

 以上のように、上記前提の下でのマイクロレンディングサービスの運用は、違法かつ重い刑事処罰を科される可能性があるため、これを大々的に展開するのは非常に危険といえます。
サービスをスタートする段階で、当該サービスを開始する際には、貸金業登録の必要があること、あるいは、本当に流通を主眼としているなら、そのようなサービスとすべきことを知っておくべきでありましたし、あるいは、質屋営業法上の許可を得たうえで、同許可の範囲でできることをするよう考えていくべきだと思います。
また、利用規約上、形式的に売買契約の形をとっておけば問題ないと思うかもしれませんが、甘い考えだと思われます。

自分の目の前に誰も手を付けていない未開の地があった場合、そこは、誰も気が付かなかった土地なのか、危険な地雷原なので、誰も近づかないのかをよく考えなければいけないし、自分で考えることができないのであれば、考えられる人に相談することが大切ではないかと思います。

※1
この規定の立て付けは、質屋営業法18条の「質置主は、流質期限前は、いつでも元利金を弁済して、その質物を受け戻すことができる。」に似ています。

※2
今回の事案では、目的物の処理に関し、利用者に、目的物を予め決まった選択肢の中から一つを選ばせ、写真を撮り、アップするという形態をとっています。しかし、基本的に写真の確認を行っていないようであり、実際に判断材料としているのは、選択肢の選択のみと考えられます。取材でも、査定を行わないことが特色のように記載されていることからすれば、そもそも、まともに古物を流通させること自体考えていないように見受けられます。

※4
なお、質屋営業法12条では、「質屋は、その営業所又は質置主の住所若しくは居所以外の場所において物品を質に取つてはならない。」としていて、質置主の住所・居所での質取りを禁止していますが、これは、あくまで質を取る際の規定であって、保管場所について、質置主に任せることを規定したものではないと思われます。

※5
上述のとおり、アップロードされている目的物の確認査定をまともに行っていないようでしから、その意味でも、質としてこれを採っているという認識自体が希薄ではないかという疑いがあるところです。

 

背伸びをしたルール

佐賀県の「Saga Education Informaition Network(SEI-NET)への不正アクセスの問題で、以下の報道がなされていました。

>佐賀県の県立高校で導入されているネットワークなどが不正にアクセスされ、生徒の個人情報が大量に漏えいした事件で、佐賀県教育委員会は、ネットワークに対する内部監査を少なくとも過去3年間は行っておらず、規定に違反した状態だったことが分かりました。
>佐賀県では、情報セキュリティーを守るため、県が導入したシステムやネットワークについて、定期的に内部監査を受けるよう「佐賀県情報セキュリティ基本方針」で定めていて、この規定に違反した状態が続いていたということです。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160629/k10010575811000.html

この手の、「ルールはあっても運用がされていない」というものは、情報漏えいや情報消失などの事件などが起こるたび、内部事情としてよく出てくる話です。

最近で有名なところでは、国民年金機構からの情報流出事故がそうですし、あるいは、少し前になりますが、レンタルサーバー会社における大量情報消失事故でも、ルールを無視した運用が常態化していたということがありました。

情報管理を行うにあたって、間違いを犯さないためのレールを敷くことは、大切なことで、ルールという筋道に沿って規則正しく運用されていれば、少なくとも、内部の人の過失により情報を漏えいする機会は少なくなりますし、本件のような内部監査が適切に行われれば、被害の拡大前に問題に気づくこともでき、また、発生した被害の拡大を防ぐためにも有用な手段をとることができます。

もっとも、それは、その組織で守ることのできるルールである場合であって、立派なルールでも、それが過重であって守れないものなら意味がないし、逆にルールを作ったところで満足してしまうことを考えると、むしろ危険でさえあると思われます。

最近は、マイナンバー法の施行に伴い、各社で取扱規程等の策定がなされていると思われますし、また、改正個人情報保護法の施行を前に、従来個人情報取扱事業者ではなかった自営業者、会社でも、対応を考えているところも増えていると思います。その際、今作っているルールは、本当に自分の組織にあったルールなのかということを振り返っていただければと思います。背伸びをしすぎて転ばないように、気を付けてください。

ゲーム内アイテムと財産的価値について(2) - 課金用アイテムによるガチャで課金用アイテムを入手できるシステムについて

ゲーム内アイテムの財産的価値に関して、私が気になっているのは、賭博との関係です。
例えば、LINE POPの場合、宝箱の中からルビーが当選することもあったようです。

宝箱の鍵の仕組み

ルビーは1つ約10円で、一度の課金額が大きくなると、若干ボーナスでルビーが多めにつく仕組みになっています。
宝箱の鍵は、1つにつきルビー約8個と交換でき、交換する量が多くなると、大目に鍵がもらえる仕組みになっています。
宝箱を1つ開けるには、鍵が一つ必要で、中身から、ルビーが10個、50個、100個出てくる可能性があります。

そうすると、日本円で換算すれば、約80円かけて、8000円相当の財産的価値が返ってくる可能性のあるクジを引いているような関係となります。

賭博の意義について、例えば、賭博罪でいう賭博は、偶然の事情に関して財物を賭け、勝敗を争うことをいいますが、ここでの「財物」は、有体物又は管理可能物に限らず、広く財産上の利益であれば足り、不動産、債権等を含み得るとされています(※1)。

ゲーム内のアイテムというのも、本来的には、ゲーム運営者からサービス提供を受ける権利なので、債権として、ここでいう「財物」にあたる可能性があります。(※2
ガチャと賭博の問題は、以前から問題視されてきたのですが、この適用が難しかった一つの理由として、得られたアイテムの経済的価値が客観的に分からないというところがあったと思います。

ただ、本件のように、最終的に経済的に評価可能な財産的価値が当選するような仕組みを作ってしまうと、そのあたりの障害は飛び越えてしまうのではないかと。

なお、この場合、プレイヤーが賭博罪に当たるかどうかのほか、サイト側が賭博場を開帳したといえるかどうかも問題となります。その場合、場をしたといえるかが問題となるでしょう。このあたりは、昨年10月28日の福岡地裁の野球賭博に関する判決が参考となるように思われます。

また、これら行為が賭博に当たるとすれば、課金行為が公序良俗に反するものとして、無効と取り扱われる可能性もあります。

ゲーム内アイテムの財産的価値、財産上の利益の問題は、既に報道されるように、資金決済法上の前払式手段に当たるかという問題でも大きな問題ですが、これにとどまらず、多種多様な法的問題に波及する可能性があります。
法規制のある中で、どのように立ち回るかというのは、法律実務家としての腕の見せ所ではありますが、これ以上の法規制を回避するために自主規制ルールが整備されたりしていることから分かる通り、今ある法を見ているだけでなく、今後の立法の方向を考慮して立ち回ることも大切なわけで、そこの観点が抜けてしまうのは、大いにまずいのではないかと、最近、決済に関係する業界の動きを見ていて思う次第です。



※1アイテムについて、財産的価値を否定する見解もあるようですが、それが武器であろうが、チケットであろうが、ゲーム運営者に特定のサービスの提供を求めるという意味では、債権にあたると思われますし、いずれにしても、財産的価値が全くないという見解は取り得ないように私は思います。なお、ゲーム内アイテムの詐取について、詐欺利得罪を認めた裁判例として、メープルストーリー事件があります。
※2 条解刑法第2版487~488頁
※3 FXの賭博該当性について検討したものとして、 

ゲーム内アイテムと財産的価値について(1) - 課金用アイテムで課金用アイテムを購入することの意味について

ゲーム内アイテムと資金決済法の関係で、最近、いろいろと騒がれていますが、LINE POPの件に関しては、「宝箱の鍵」で「宝箱」を開けることが、電子マネーによるサービスの対価支払いのような関係にあるかということが問題となっています。もっとも、「宝箱の鍵」は、現金でこれを購入することができず、アイテムとの交換でのみ入手するできることが問題を複雑化させています。

すなわち、このゲームの場合、リアルなお金で購入できるルビーというアイテムがあり、ルビーは、様々な用途に使えるところ、そのうちの一つが「宝箱の鍵」に交換するという用途で、その「宝箱の鍵」というのは、ゲーム内でランダムに発生する宝箱を開けるために必要なアイテムであって、宝箱を開けると、いろいろなアイテムが当たるという仕組みになっていました(下図参照)。

宝箱の鍵の仕組み

本件では、前払式支払支払手段該当性の要件のうち(資金決済法3条1項)、この宝箱を開けるということが、権利行使といえるのかと、宝箱の鍵の入手について、対価発行といえるのか、が特に問題となります(※1)。

このうち、対価発行については、ルビーを財産的価値としてみて、これを対価として得て宝箱の鍵を発行しているとすれば、満たすと考えられるわけです。(権利行使該当性は、別に詳しく説明しているサイトがありますので、ここでは触れません)。(※2)

少なくとも、直接の課金により得ているアイテムというのは、現実世界における価値評価と結びつきやすい関係にあるので、財産上の価値と捉えることは、比較的分かりやすいのではないかと思われます。

最近は、課金アイテムを使って、別のアイテムに交換させ、そのアイテムでガチャを引かせるようなサービスが増えてきているような気がしますが、一時はごまかせるにしても、全体を見れば、基本的には名前と価値の表示の単位を変更しているくらいで、実質的には直接課金しているのとほとんど変わりなく、右に習えで法的な検討を緩めてしまうことはリスクが高いように思われます。



※1 LINE POPの件について詳しい検討を行ったものとして、法律事務所ミライト・パートナーズの2016.4.6付けブログ「LINE(株)に対する関東財務局検査と資金決済法に関する簡単な解説」が参考になります。
http://milight-partners-law.hatenablog.com/entry/2016/04/06/143532#fn-28adf80c
※2なお、ニュース記事などのなかには、宝箱の鍵自体を財産的価値とみるかどうかを問題としているものもあるようですが、「宝箱の鍵」自体が前払式支払手段かを問うのであれば、財産的価値があるかどうかを問題とすべきは、この場合、対価たるルビーです。

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