マイクロレンディングサービスと貸金関連法規

本日いろいろと話題になっていたマイクロレンディング的なアプリについてです。

1.前提

まず、今回問題となった具体的な事案のサービスの運営主体は、古物営業の許可はとっているものの、貸金業や質屋営業の許可は得ていない様子なので、これを前提に検討します。

また、具体的事案の利用規約では、古物の売買を前提とし、目的物の引渡期限を2か月に定め、引渡期間の経過までの売買契約解約と売買代金支払義務、15%のキャンセル料の支払義務が定められており、同じく、これを前提に検討します。
(特定の企業を責めたいわけではないので、できるだけ抽象化します)。

たしかに、上記の規約上の体裁としては、2か月後の目的物引渡しを定めた古物の売買があり、一見、古物営業の許可のみでいけているようにみえます。

しかし、この売買は、2か月間は利用者側で売買契約を自由に解約し、売買代金と15%のキャンセル料を支払えば、目的物の引渡しを避けることができることを合わせて考えれば、その実質は譲渡担保であるといえます(※1)。

そもそも、古物の流通のために、売主に所有を留保する必要はなく、これが単なる古物の流通であるという言い訳自体が不合理です。この状況は、返済を前提とするUIから認められるところでもあります(※2)。

結局のところ、ここで行われているのは、実質的には担保付きの貸金であるといます。

実質的には担保付き貸金であるものについて、消費貸借契約としての法律効果を生じさせるかどうかは、最終的には、民事に関しても刑事に関しても最終的には裁判所の判断となり、あるいは取締りの関係では主務官庁の判断となりますので、確実に担保付き貸金であるとは現時点で断定できませんが、以上で見てきたように、基本的に本件事案のサービスは、貸金業や質屋営業における規制の潜脱を行うもので、私としては、本件は、貸金の関連法規が適用されるべきサービスと考えます。

(※下線部2017/6/29 8:33修正:この点については、実質論だけで必ずしもそうなると断定できないのではないかという意見をいただきました。また、「商品を送れば金銭の支払いの義務が生じないものについて、返還合意を観念できるか」との指摘を頂きました。これらを踏まえ、上記のように記載を修正し、さらに、法解釈の問題で、断定的に書くことは適切ではないように思われましたので、これを改めました。ご意見有難うございます。)

この場合、問題となりそうなのは、質屋営業法、貸金業法と出資法です。

2.質屋営業法との関係

まず、質屋営業法でいう「質屋営業」は、「物品…を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業」をいうと規定されています(同法1条)。

ここでの「質」が民法の動産質と同義であれば、占有改定(元の占有者が、新占有者のために占有する意思を示すことによる占有権取得で、占有の外観が変わらないもの)では成立要件を満たさず、単に譲渡担保があるだけである以上、そもそも、質屋営業とはならない可能性が高くなります(※4、※5)。

なお、仮に質屋営業に当たるとすれば、無許可であるため、無登録で質屋営業を営んだとして、処罰の対象となります(質屋営業法30条・5条、3年以下の懲役もしくは10万円以下の罰金又は併科)

3.貸金業規制法との関係

質屋営業にあたらないとすると、残るのは単なる貸金であり、今度は問題となるのは、貸金業法、出資法との関係です。

まず、貸金業規制法でいう「貸金業」は、「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うもの」とされています。

このように、利息を収受するかどうかは貸金業であるかどうかの問題には関わらず、キャンセル料が仮に利息ではないとされたとしても、譲渡担保をとった貸金を業として営んだということであれば、無登録でなされたものとして、処罰の対象となります(10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金または併科)。

次に、キャンセル料が利息と考えられる場合(率でとるし、元が貸金なので、利息以外考えられないのだが)、出資法の問題となります。

キャンセル料を2か月で15%とすると、単純に6を掛け、年間で90%となります(実際には、2か月「以内」で、率が変わらないので、返済期間によってはもっと高くなります)。

出資法上、業として行わない者が処罰される金利は、109.5%ですが、業を行なう場合には、年20%を超える割合で利息の契約をすれば、処罰されます(出資法5条、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金)。

なお、業として行っている者でも、109.5%を超える利息を取る場合には、さらに重い処罰がありますが、上述のように、例えば1か月で返したのに、率を変えないと、年利180%にも及んでしまうため、楽々これを超えてしまうことにもなります。

さらに、利息制限法があります。利息制限法では、「金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、利息とみなす。ただし、契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りでない。」とされていて、このみなし利息規定があることにより、ほかの法律より、利息とみなされる可能性が高いです。ここでのキャンセル料が「契約の締結及び債務の弁済の費用」にあたるのだというのは、かなり無理があるように思われ、そうなると、手数料自体も、年20%に切り下げられることになります。もっとも、上述の処罰されるリスクと比べれば相当低いリスクといえますが。

4.まとめ

 以上のように、上記前提の下でのマイクロレンディングサービスの運用は、違法かつ重い刑事処罰を科される可能性があるため、これを大々的に展開するのは非常に危険といえます。
サービスをスタートする段階で、当該サービスを開始する際には、貸金業登録の必要があること、あるいは、本当に流通を主眼としているなら、そのようなサービスとすべきことを知っておくべきでありましたし、あるいは、質屋営業法上の許可を得たうえで、同許可の範囲でできることをするよう考えていくべきだと思います。
また、利用規約上、形式的に売買契約の形をとっておけば問題ないと思うかもしれませんが、甘い考えだと思われます。

自分の目の前に誰も手を付けていない未開の地があった場合、そこは、誰も気が付かなかった土地なのか、危険な地雷原なので、誰も近づかないのかをよく考えなければいけないし、自分で考えることができないのであれば、考えられる人に相談することが大切ではないかと思います。

※1
この規定の立て付けは、質屋営業法18条の「質置主は、流質期限前は、いつでも元利金を弁済して、その質物を受け戻すことができる。」に似ています。

※2
今回の事案では、目的物の処理に関し、利用者に、目的物を予め決まった選択肢の中から一つを選ばせ、写真を撮り、アップするという形態をとっています。しかし、基本的に写真の確認を行っていないようであり、実際に判断材料としているのは、選択肢の選択のみと考えられます。取材でも、査定を行わないことが特色のように記載されていることからすれば、そもそも、まともに古物を流通させること自体考えていないように見受けられます。

※4
なお、質屋営業法12条では、「質屋は、その営業所又は質置主の住所若しくは居所以外の場所において物品を質に取つてはならない。」としていて、質置主の住所・居所での質取りを禁止していますが、これは、あくまで質を取る際の規定であって、保管場所について、質置主に任せることを規定したものではないと思われます。

※5
上述のとおり、アップロードされている目的物の確認査定をまともに行っていないようでしから、その意味でも、質としてこれを採っているという認識自体が希薄ではないかという疑いがあるところです。