ウィルスと器物損壊

コンピューターウイルス:「タコイカ」PC乗っ取り 器物損壊容疑を適用
という記事を見ましたので,ウィルスのことを今日は書きます。
「タコイカ」ウィルスは,スクリーンセーバー形式の実行ファイルを起動すると感染する,トロイの木馬型のウィルスです。これに感染すると,ファイルが次々に魚介類の画像に置き換わるというもののようです。システムファイルも置き換わったり,外部にファイルを送ったりもするらしいです。
基本的にファイル交換ソフトで入手した動画ファイルなどに偽装されたファイルを実行して感染しているらしいので,あまり被害者が名乗りでないみたいですね。
で,器物損壊罪の適用について,事案が分からないので,実際のところどうか分かりませんが,一般論から言えば,やはり無理があるのではないかと思います。
まず,ファイルを器物損壊罪の客体と捉えることが出来るかと言うことですが,器物損壊罪の客体である「物」とは,財産権の目的となる物件であり,判例はこの点について管理可能性性があればよいという説を採っていると言われていますが,情報については,基本的に情報が化体された物(要は,情報と一体となっている物,紙とかハードディスクとか)を財物として扱っており,情報が財物性を有していると捉えられるのかは疑問です。
 ただ,管理可能性説を突き詰めると,情報は管理可能なので,財物だといえる可能性もあります。もしこれが判例上認められることになれば,かなり画期的だと思います。ただ,処罰範囲がかなり広がりそうで,罪刑法定主義の観点から問題がある気もします。
本件がハードディスクを損壊したものとして器物損壊にあたると考えた場合,客体はクリアしますが,今度は損壊したといえるのかが問題となります。損壊は,物の効用を害した場合と,物理的に物の全部又は一部を害した場合がありますが,ハードディスク内の個別のファイルをいくつか他のファイルに入れ替えたことで,物理的に害したとはいえないでしょうし,物の効用を害したといえるのか疑問です。
システムファイルを復元不可能にした場合であれば,OSの起動を不可能にして,ハードディスクの効用を害したといえる余地がないでもありませんが,OSを入れ替えればハードディスクを使用することは可能ですし,ハードディスク自体の効用を害したといえるのかといわれると,やはり疑問に思います。「OSが入っているハードディスク」の効用を害した,と言い切ることができるのでしょうか。

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